文芸8月

【#にじさんじ甲子園 2021夏】②苦難の特訓

works:ユネ

樋口監督最初の夏の甲子園は厳しい結果だった。予選1回戦は快勝となったものの、2回戦にて僅かに届かず敗退。だが三年生が引退後初の練習試合では、月ノ・花畑をはじめとした1年生が大活躍して、成長が期待される結果となった。
 秋の府大会では月ノが先頭打者ホームランを放つなどの大活躍。
 その後の練習試合や合宿では中々選手との息が合わない場面が多かったが、星川を中心とした選手たちが何度もグラウンドを整備して、V西の士気を上げていった。
 樋口監督が就任して2年目の春、V西に新たな風が入ってきた。えるや明楽レイなど魅力的な選手達だ。ソンミアや笑顔が素敵な西園、赤い髪がトレードマークのドーラ、威圧感が凄まじいベルモンド達がV西を更に強固に支えてくれるだろう。
 新入生を迎えての練習試合では、9回表まで3対0と苦戦をするも、裏にて3点を奪い同点にまで巻き返した。
 夏の甲子園では3回戦まで快進撃をみせる。4回戦準々決勝では9回裏まで1対1の激しい攻防となり、迎えた10回表にて2点を取られた。惜しくもV西の敗退となったが、試合中の選手たちの活躍に樋口監督は嬉しそうにしていた。
 3年生が引退後は、ピッチャーとしてV西を支えているでびでびがキャプテンとなった。でびでびがキャプテンになって初の合宿、その合宿にて大きな成長があった。
 合宿1日目には西園がムード〇、ゆうたがダメ押し。2日目以降もでびでびが粘り打ちを会得し、そしてうっかり小夜ちゃんが監督待望のキャッチャーをうっかり会得。樋口監督も今回の合宿には大満足の様子であった。 合宿にて成長を遂げたV西。1年目の長い苦境を乗り越えたV西は、果たしてどんな輝きを見せるのか…!

【#にじさんじ甲子園 2021夏】
③覚醒大人ケツ人間

works:二村樹月

V西の二人の天才、打てる守れる「月ノ美兎」と守備の要打てない天才「花畑チャイカ」
「お前は大人ケツ人間や!!」
チャイカを打てる天才に覚醒させるための打開策、改名の義を行った後の初の公式戦。
秋の府大会1回戦 対道頓堀
ベンチで腕を組みながらジッと見つめる先にはバッターボックスに立つチャイカ。この試合で力を出さなければその名は卒業まで戻らないだろう。
だが今日のヤツはひと味違った。力強く振り切ったバットは球を捉え真っ直ぐにレフトスタンドへと運んでいった。
「きたぁー!!大人ケツ人間ー!!!」
先頭打者ホームランに樋口監督が叫ぶ。ホームベースを踏み、ベンチに戻ってくる姿は以前とは全く違い何かを掴んだ表情をしていた。
しかしその後の試合展開はあまりいいものではなかった。でびが好投するも点はなかなか取れず、6回裏に3点取られ逆転リードされてしまった。
7回表、点を取りたい場面で大人ケツ人間がチャンスをもぎ取った。タイムリーヒットを打ちランナーを帰して2-3。
えるが慌てず球をしっかり見てフォアボールで押し出し同点に。流れはV西へと来ている。
でびが無失点で抑え、それに応えるように星川のツーランホームラン。これで5-3となり点差を広げる。

迎える9回表V西の攻撃。
大人ケツ人間の打席。きわどいところもしっかり見ている。いや、見えている。
狙っていたとでも言うかのような表情で、ボールを芯で捉え綺麗なフォームのまま鋭い打球がレフトスタンドへ伸びていく。
「きたああああ!!ぶっ刺さったよ!」
球場が一気に沸き立ち、ベンチからは樋口監督の喜ぶ声が響いてくる。
大人ケツ人間はダイヤモンドを駆けながら右手を力強く掲げガッツポーズを決めた。

大人ケツ人間、いや、これが花畑チャイカの真の姿だ。

【#にじさんじ甲子園 2021夏】④救世主1年生入学

works:さんげん

 二年目の冬がきた。スカウトの季節だ。
 評判が「そこそこ」のV西は地元しかスカウトに行けないが、その大阪で運命の出会いがあった。全国大会準優勝チームの三塁手を務めた夕陽リリだ。正直もっと上の高校を狙える逸材だ。すでにうちのスタメンより上かもしれないと樋口監督は頬を引き攣らせた。彼女がうちに来てくれれば……!
 リリはV西を知らなかった。けれど監督の熱い勧誘に心惹かれたのだろうか、彼女の返事は良いものだった。周囲にどれだけ強豪校がいようと甲子園を信じる姿は、中学生の目にどう映ったのだろう。
 良い選手と出会い、チームの評判も上がり、V西の冬は順調だった。みんな成長した。特訓が功を奏し、特にエースのでびは育った。あとは捕手だ。現正捕手の小夜も育ってはいるが、まだ足りない。捕手は常にチームの課題であり、監督の悩みの種だった。

 四月、監督は緊張していた。スカウトした選手は本当に来てくれるだろうか。思わぬ拾い物は得られるだろうか。
 ずらりと並ぶ新入部員の中にリリがいて安堵したのも束の間、見つけた。
 捕手のましろ。試しに球を受けさせてみたら音が違う。でびの顔が違う。
 この子だ。この子がV西の正捕手だ。あまりの出来事に監督は震えていた。ついている。今年は本当にいけるかもしれない。
 小夜には悪いが、正捕手の座は一年に譲らせることを選んだ。でも君の打撃力が必要なんだと、外野へのコンバートも指示をした。その選択が間違ってなかったと、甲子園への出場で証明したい。
 グラウンドに新チームの声が響く。
 ましろ、夕陽リリ。二人はV西の救世主になる。そんな確信めいた予感に、監督は高らかに笑った。
 天才二人を擁するV西に新たな戦力が加わった。さあ最後の夏、夢を掴むため新チームが始動する――。